
乾癬
乾癬
乾癬は、皮膚に銀白色の鱗屑(りんせつ:皮膚の粉)が付着し、境界のはっきりした赤い斑点(紅斑)が盛り上がって出現する慢性炎症性疾患です。最も多いタイプが尋常性乾癬(約90%)で、一番典型的なタイプを指します。
尋常性乾癬は物理的な刺激によって、一見正常な皮膚に乾癬が出現するという特徴があります(ケブネル現象といいます)。そのため物理的刺激を受けやすい頭部、ひじ、ひざ、でん部、下腿などにできやすく、かゆみを伴うこともあります。
また、爪の変形や関節炎がみられることもあり、症状や進行度には個人差があります。
皮膚のターンオーバー(皮膚の新陳代謝)が異常に早まることで角質層が蓄積し、炎症や剥がれ落ちる鱗屑となってあらわれます。免疫機能の異常や遺伝、生活習慣・ストレスなどが複雑に絡み合うと考えられており皮疹やかゆみ、関節症状による生活の質(QOL)の低下が問題となることがあります。慢性的に経過するため、軽快と悪化を繰り返す点が特徴です。
全乾癬の約90%を占める尋常性乾癬は比較的ゆっくりと皮疹が広がり、鱗屑が特徴的に付着します。滴状乾癬は小さな発疹が散在し、若い世代や感染症後に多い傾向があります。一方、乾癬性紅皮症や膿疱性乾癬では激しい症状を伴い、速やかな医療対応が欠かせません。乾癬性関節炎になると、皮膚の症状に加え関節の変形や痛みで日常生活に大きな支障を来すケースがあります。
全乾癬の約90%を占める代表的なタイプ。
若年層に比較的多く、
全身の広範囲に炎症が及ぶ重症型。
膿の入った水ぶくれ(膿疱:のうほう)がみられるタイプ。
日本では乾癬患者の5~10%で関節症状を伴う
乾癬が起こる正確なメカニズムは未解明の部分も残りますが、以下の要因が複合的に関わっていると考えられています。
T細胞を中心とする免疫反応が亢進し、サイトカイン(TNF-α、IL-17、IL-23など)が増加することで皮膚のターンオーバーが異常に早く進み、皮膚が厚く盛り上がって鱗屑を形成します。
家族に乾癬の患者さんがいる場合、発症リスクが高まることが知られています。ただし、遺伝だけで発症が決まるわけではなく、環境因子や生活習慣も影響します。
乾癬は完治が難しいとされていますが、治療法の進歩により症状をコントロールして良好な状態を保つことが可能です。患者さんの症状やライフスタイルに合わせ、以下の治療を組み合わせることが多くあります。
TNF-αやIL-17などのサイトカインを特異的に抑える治療で、従来の治療で十分な効果が得られない中~重症の患者さんに検討されます。注射や点滴による投与が主ですが、高い有効性が期待できます。
乾癬は自己免疫性の慢性皮膚疾患で、赤く厚みを帯びた皮膚病変(紅斑)と銀白色の鱗屑が特徴です。免疫や遺伝、生活習慣などの要因が重なり合って発症・悪化し、長期にわたって繰り返します。適切な治療とセルフケアを継続することで症状のコントロールが可能になり、QOLの向上につなげられます。外用薬や光線療法、内服薬、生物学的製剤などの治療選択肢が充実しており、患者さんの状態に応じて組み合わせて進めていきます。気になる症状がありましたら、お気軽にご相談ください。