【帯状疱疹ワクチンと認知症リスクについて】
- 2025/06/02
- 一般
こんにちは。針中野みずた皮ふ科形成外科の水田栄樹です。
帯状疱疹ワクチンが2025年4月1日から、65歳の方を対象に帯状疱疹ワクチンの定期接種の対象となりました。
5年間は70歳以上で5歳刻みの年齢の方も対象です。
このワクチンは、もともと皮膚症状改善後も痛みが長い期間残ってしまう「帯状疱疹後神経痛」の発症率をワクチン接種で低下させるため、我々皮膚科医にとっても非常に大切な予防策でした。
ですが、最近の研究で、これまでとは違う思わぬメリットがある可能性がでてきています。
「帯状疱疹ワクチンが認知症発症リスクを低下させる」 という報告が有力になっています。先日の日本皮膚科学会総会でも出た話題ですね。
「うそじゃないの?」と思われるかもしれませんが、世界的な科学雑誌『Nature』にも「帯状疱疹ワクチンと認知症発症リスク」に関して掲載されています。A natural experiment on the effect of herpes zoster vaccination on dementia | Nature
帯状疱疹の原因ウイルスが再び活性化するのをワクチンで防ぐことで、ウイルスが神経系にもたらすダメージを減らし、結果的に認知症の原因となる脳のダメージを減らせるとされる意見もあるものの、これについてはまだ仮説の段階です。
帯状疱疹ウイルスって、神経節にひそんでるウイルスなんですよね。疲れや一時的な免疫機能の低下があると、神経節にひそんでいるウイルスが再び活性化(元気になる)して、神経を通って皮膚表面に現れます。
感覚を担っている神経に沿って出てくるので、その神経が管理している範囲の皮膚に出現します。そのため、くっきり範囲が決まってたり、片方だけ皮疹が出ます。
髄膜炎を起こすこともあります。神経系と髄膜(脳を保護する膜)は密接な関係にあり、帯状疱疹と髄膜炎の関係は皮膚科医の中では常識になっています。そのため脳に関係している認知症に関しても、あながち根拠のない話ではないかと思います。
小難しいことは割愛しますがこの研究では帯状疱疹ワクチンを接種したグループでは、接種しなかったグループに比べて認知症と診断されるリスクが約20%減少していると示されました。
20%減っていうのはすごいことで、既存の報告でこれほどの認知症予防効果があるものはまずありません。
効果は男女ともに認められましたが、女性の方がやや効果が高い傾向があるとの事です。
「ワクチンさえ打てば認知症にならない」わけでは決してありませんが、ワクチンを受けておけば将来の認知症が減る“かもしれない”というプラスの期待が持てるのは朗報です。
今年8月1日に開業を予定している針中野みずた皮ふ科・形成外科では、帯状疱疹ワクチンのご相談、帯状疱疹の治療についても対応致しますので、関心のある方はお気軽にお尋ねください。大切な体を帯状疱疹から守り、将来の不安を少しでも減らす一助として、ぜひ活用していただければと思います。
針中野みずた皮ふ科・形成外科
皮膚科専門医・形成外科専門医 水田栄樹